ここはちっぽけな自分の家であり広大な宇宙だ
思いついたまま短文を投下していく場所です 最近よろず傾向が顕著ですよおおおお

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わかってんだよ、そんくらい                 
「あ?来んなって?」
「そうだ!」
「なんであんたに俺の行動左右されなきゃなんねえんだ?」
「なにがなんでも!」
またか、と思った。目の前にいるのは、救助隊「いざよい」に
最近入隊した、バカぢからのミズゴロウだ。女のくせに女っぽさの
欠片もねえやつ。なんか知らねえけど、こいつはたびたび救助の
手伝いを断りにやってくる。勘だがこいつの独断で。
俺は俺の意志で手伝いたいとき手伝ってるし、それを第三者に
口出しされてやめる気も毛頭ないが、こう何度も言われれば
理由を気にしないほうがおかしいだろう。しかめっ面をしたままの
そいつにはあ、とため息をこぼした。
「おい、ひとがこれと決めたことにやめろって口出しすんなら、
 ソレ相応の理由くらい吐け。ガキじゃねえんだ」
「!」
「はいそうですかってすぐやめるような軽い気持ちで
 あいつを手伝ってんじゃねえんだよ、俺は」
元人間。災厄。世界を救いしもの。そんなものはあいつを飾る
余計な装飾に過ぎない。あいつはあいつとしてこの世界に居る。
呼吸をし、見て聞いて少し笑って、そうやって透明に
どこまでも澄んだ信念をもってただこの世界に息づくだけの、
なんら特別なことのないいきもの。ポケモン。
バカぢから女(目の前のコイツ)は口を引き結び、意を決したように
俺を睨んだ。へえ、そういう顔もできんじゃん。
「・・・ボクは。お前がユナさんと一緒にいるのが気に食わない」
「ほぅ」
「ユナさんは、カイさんと一緒に居るのが一番自然だ。
 たまに、笑うよ・・・すっごく綺麗に。ボクはそれを崩したくない」
だから、こないで。そいつは言った。
新人とはいえ、こいつはよく観察できているようだった。こいつが
言ったことはそのまま俺がユナを見ていてわかっていることだ。
あいつが一番自然体でいるのはカイの隣だし、一番笑顔を見せるのも
カイの隣だ。それはもう崩しようなく堅牢に、ユナの意志の柱。
そう、崩しようが、なく。
「・・・わかってんだよ、んなことは」
「え?」
「俺だって鈍いわけじゃねえ。最初から知ってる。あいつらを、
 ずっと始めのときから見てきた・・・気付かねえわけねえだろ」
「だったら、」
言い募りかけたそいつに手のひらをむけて言葉を制する。
「わかっててやってんだ。俺はカイみたくあいつの横にいつも
 居られるわけじゃねえ。わざとやってんだよ。これくらい許せ」
ほんのたまに、あいつの意識が向く先にいられるならそれでいい。
あの赤い目が、俺を見て、カイに向ける笑顔と違っていても、
笑んでくれればそれでいい。刹那でも、隣に居て、並んで歩けるなら。
それでいい。それでよかった。これからもずっとそうだ。
「・・・」
「あいつはいい女だ。でも自分を大事にしない。カイの手に
 余るときもある。そういうとき、少し守れりゃ満足だ。
 あんたもちゃんと、見といてやってくれ。あいつは
 油断ならねえぜ?」
踵を返す。バカぢから女に背を向ける。待て、という制止の声
には耳を貸さず、手だけ振っておいた。
「・・・わかってんだよ・・・んなことは・・」
余計なこと喋っちまった、心の中だけで舌打ちして、俺は
自分の住処に帰ることにした。
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: 救助隊 : - : - : posted by 古藍 :
せめて夜明けまでの逢瀬                 
「だったら、」
血を吐くように搾り出された声。喉をつぶすほど。息がかれるほど。
されどその両の目からは雪雫。
「だったら、わたしはっ、どうやって、そばに・・・」
塩の味を宿したそれはとめどなく。
「居たら・・・いいん、です・・・っ!!!?」
胸をたたく弱弱しい拳を包み込んだ。
少女は、どうして、そうやってまた、優しくするんです、と問う。
答えもせず、また再び問うことも許さず少女の桜の唇を奪った。
噛み付くように、飲み込むように、口に食んだ彼女の唇は、
初めて口に含んだときより甘やかさを増したようだった。

: 別ジャンル : - : - : posted by 古藍 :
地獄地下道ご案内                 
「あんたぁ、馬鹿な人だ」
おもむろにキセルを吸い、細く長く煙を噴出しながら男は言った。
着崩したような着物のあわせから片手を出して、だらしなく座りながらも
男の目は強く底光りをみせ、只者でない様子をうかがわせる。
使い込んだ草履の裏で足元の灰を地面にかき回し、わざとなのか、
腰元の脇差をちらつかせた。
「こんな世界に、わざわざ足を突っ込んでくるような奴ぁ、
 今までごまんといたがね。あんたさんのように、ここまで無謀な
 奴ってのぁ、初めてだ。
 あんたさん・・・自分の首、賭ける覚悟あるんかい?」
知っている。この男は「そっちの世界」から足を洗った伝説の男。
今この瞬間、俺が死んだなんて自覚する隙すら与えず首を落とすなんて
この男にはたやすいはずだ。表の世界で、とはいえそれこそ底辺の、
泥水をすするような生き方を、血で血を洗うような生き方をしてきた
俺の全てを見切りながら男は話している。
これは試験だ。この男の眼鏡に適うかどうか。適わなければ、死あるのみ。
「あると言えば嘘になる。ないと言っても、嘘になる」
「ふぅん。続けて」
「俺は、生き延びる覚悟をしてる」
「へぇ。目ん玉えぐられても?生きたまま皮を剥がれても?
 手足もがれても?男の証取られちゃっても?」
それでも絶望せんで生きられるのかい。言外に含まれる問。
当然だとは言わない。
「それでも生き延びたい」
「はっは。青臭いねぇ」
だがそこがいいかもしんないねぇ。ふたたびキセルをくわえる男。
独特のリズムで床を叩くと、ガコン、とそこがくぼむ音。
「近頃とんとみかけやしねぇ、青臭い青年よ。面白くなりそうだし、
 案内してやるよ。死んでもあんたさんの責任な。俺ぁ一切手出ししねぇから」
こっちの世界じゃあ血の花も趣ってな。くぼんだ床に現れた階段を
降りていく男についていく。踏み込んだ世界からは、もう二度ともどれはしない。
: 創作 : - : - : posted by 古藍 :
春風は心にも                 
ふと、自分の頬をかすめた風を追い視線が後ろを振り向く。それほど積もらない雪もとけ、
草木が青々としげりだす春が近づくにつれ、広場のポケモンたちもうきうきとしてくるようで、
陽気なポケモンなんかはスキップしながら歩くほどだ。
自分も草ポケモンだし、春の暖かさには自分が人間であった頃以上の喜びを感じるが、
この説明のつかない嬉しさはどのタイプのポケモンにとってもどうも同じであるらしい。
その証拠に、友達エリアへ続く道から黄色い体躯が弾むように駆けてきていた。
「・・・カイ」
「ユナ!おはよう!」
ぜぇぜぇ、はぁはぁ。余程全力で走ってきたのか荒い呼吸を繰り返すカイに水を渡し
落ち着くように背をさすってやると、ようやっとカイは呼吸を整えた。
「そんなに急いで、どうしたの」
「あ、ユナ!そうそう実は僕思いついたんだけど!」
びっ!と空を指差して、トレードマークである笑顔を輝かせカイが言うには、
こんなにぽかぽか陽気なんだから『いざよい』みんなでピクニック行こう!と
思いついたので、真っ先にまずユナに話したいと思った、ということのよう。

あの世界の危機を乗り越えた事件から1年以上経つ。
カイはこうやって何か思いついたり、何かを見つけたりする度一番にユナに
話すようになっていた。ユナもそんな彼の行動の中に見える好意には気付いていたし、
素直に声には出せずともその気持ちが嬉しいので、目を細め、ささやかに微笑いながら
カイの話を聞く。あの事件当時はあまり笑わなかったユナが微かではありながら
笑うようになった事実を広場のポケモンたちは暖かく見守っていた。

今もこうして朝一番、しかも全力疾走して提案をするカイを見て、心があたたかくなる
感覚を抱いたユナにカイの提案を却下する選択肢など毛頭なく、『いざよい』リーダーの
許可を得たピクニックは今日の午後決行されることになった。幸い急を要する依頼も
今は入ってきていない。
「アブリルに、チロルに、ミト!皆其々色々持ち寄ってくれるって!」
「そっか」
素早く連絡をまわしたカイの仕事の速さに驚きつつ、午後の行事を楽しみにする。
ユナは他のポケモンたちより感情の起伏が少ないためとても静かだけれども、
心の中ではちゃんと考えて、楽しみにしてくれている。カイにはそれがわかっていた。
ユナが嬉しいと僕も嬉しい、ユナが笑えば僕はそれだけできっと幸せ。
食料庫からユナお手製のアップルパイやリンゴジャムを取り出して準備していると、
その準備の間静かだったユナが唐突に口を開いた。
「カツキも誘おうか」
ごつん。
思わず手に持っていたリンゴジャムの瓶を地面に落としてしまった(セーフ!割れなかった)
「・・・ユナ、どうしてカツキ?」
「え、だって。いつもお世話になってるし。この間も、仕事手伝ってくれた」
カツキ。ほんとはアカツキって名前のグラエナ。珍しく一匹だけで救助隊を
やってるあいつは、あらっぽいけど確かに実力はある。あるのだけれど。
(その手伝い、ユナがいるからだって、ユナは気付いてないんだろうなぁ・・・)
他の救助隊を手伝った話など聞いたこともないし、元々あいつは一匹狼な性分だ。
『いざよい』を手伝うのは、ユナがいるからなんだ。『ここにユナがいるから』。
「・・・うん。じゃあ、カツキにも連絡しておくよ」
「良かった。ありがとう」
・・・ユナって大分鈍感だから、なにも知らないんだとは思うけど。
(負けたく、ないんだよね)
何が何でも。
再び沈黙し、準備に集中しているユナを横目で見ながら、ここにはいない
カツキに見えない挑戦状をたたきつけるような心持だった。

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救助隊
パートナー→主人公←ライバル
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: 救助隊 : - : - : posted by 古藍 :
その味さえ甘く                 
大粒の涙が、彼女の藍色の双眸からぽろりぽろりと流れ落ちた。
僕を下敷きにベッドに倒れこんだ体勢で、僕の顔には雨のようにその涙が
降り注いでいる。雫がサファイアの頬を伝い、顎を離れ、僕の顔に降る瞬間
瞬間を僕は記憶した。目は、それを見逃さんとばかり、そればかりを見ていた。
だって、とても、きれいだったから。
「なして、なし、て、あんた、はっ」
「うん」
「・・・っ」
言葉をなくし、ぎゅ、と閉じた目からは再び雨を降らせる。
乾いていたはずの僕を、それはあまりにも簡単に潤していく。
僕は彼女に出会ってから、至極単純なつくりになってしまったらしい。
笑おうが、泣こうが、例えその顔が僕をののしるために歪んでも、
きっと僕は君を美しいと思うんだろう。
口の端で受け止めた塩辛い雫を舌先で拾い、それでも物足りないと彼女の
頭を引き寄せた。唇を寄せ、未だ止まらぬ涙を拭うよう、あからさまに
吸い付くと、潤んだ瞳を薄く開け頬に朱を散らして彼女は僕を見た。
ああ、この涙さえ甘美。

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ルサ
君の全てが甘く、僕を肯定する。
: ポケスペ : - : - : posted by 古藍 :
不等号の開く先                 
「僕は、そういうのは嫌なんだよ」
引っ込められそうになった彼女の両の手を取る。そこには、
肘まで覆う包帯の白。血こそにじまないにせよ、その下には傷がある。
彼女が見も知らぬ子供をかばって、野生のポケモンから受けたものだ。
そのポケモンは、さっさと逃げてしまったけど。あの一瞬、ほんの刹那、
自分の中から全てのものが、いわゆる感覚や記憶や呼吸さえ、消え去った
のを鮮明に覚えている。
今サファイアは呆然とした顔で僕を見ていて、自分がどんな顔を
しているかなんとなく想像できる。少なくとも笑顔では
ないだろう。口の端を持ち上げている感触はゼロと等しい。
「どげん、こつ。あのまま、あの子ばほっといたら」
「あの子が怪我したろうね。でもいいんだ、それで」
「・・・ルビー、それ本気で言っとうか?」
「本気」
彼女の額に額をあわせ、怪我をしている手を包み込む。
それでも傷に障ったのか、少しだけ彼女の方がはねる。
(それとも、こんな僕が触れたから、かもしれない)
「僕は汚い。君が思ってるよりずっと。君が在るなら
 他はどうなったっていいって思ってるんだから」
「それは、」
「こんな僕でごめん。でも、・・・好きなんだ」


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ルサ
(こんな僕でも愛してくれますか)
: ポケスペ : - : - : posted by 古藍 :
乱桜-二重咲き-                 
たたん。
森の暗闇の中から、まるで生き物のように飛んできたクナイはまるで
目でもついているかのように正確に、俺の装束を樹に縫いとめ俺の左肩を
貫いた。くそ、やっぱり子供一人抱えながら逃げるのはきつかったか。
抱きかかえた子供が泣きそうなのを必死でこらえて俺の装束を握り締めている
のがわかる。ああ、わかる。誰だって死にたくないしこんなん怖いに決まってる。
任務だからとかはあんまり関係なく、絶対にこの子だけは救い出してみせると
決めたのに、突き刺さるクナイは鉛のように重く俺を自由にしてはくれなかった。
かなり高度のある枝だ、この子だけでもと逃がしてやることも残念ながら出来ない。
ふいに気配が生じた。
少し離れた枝の上に、音も無く降り立ったのは女。
真暗闇の装束には袖が無く、丈も極短い。真珠を散らしたかと見まごう程の肌の
手足を惜しげもなくさらし、細い指はいくつものクナイを携えていた。たった今
自分を縫い付けているクナイと同じもの。漆黒の長い髪を飾った顔には白狐の面、
ところどころに施された紅がやけに目を引く。ああ、こいつが。
・・・こんな女、普通の状況だったら絶対放っておかないのに。
「湯走(ゆばしり)の欲深殿様が腕利きのくノ一雇ったっつー噂は小耳に挟んでたが。
 ・・・あんたか、『名刀「乱桜」』」
「・・・」
まとう空気は刃のごとく、繰り出す斬撃は桜乱れ飛ぶが如き故、
誰もが掴めず落とすは自らの首、いつしか誰が呼んだか『名刀「乱桜」』。
無言は肯定なのか否定なのか、気配をぴくりとも動かさず『乱桜』はクナイを構えた。
「・・・・・・何処の手の者ですか。発言権は一度のみ」
他を話せば殺します。鈴を転がすような澄んだ、けれどもアルトの響きを持つ
その声は、殺気で研ぎ澄まされていた。知らず顎を汗が伝う。こんないい女が
俺より手練れの忍とは世も末だと場違いに考える。いや違うだろ落ち着け。
他を話せば殺します。っても、どうせ話したってこの子を奪還された後口封じに
首ちょんぱもしくは心臓を一突きで俺の人生はおしまいだ。それはちょっと
避けておきたい。断じて俺の保身のみを願うものではなく、今腕に抱えている
子供をおもってのことである。
この子には身寄りが無い。ここまでの道中で聞いたことだが、湯走の城に無理矢理
連れて行かれそうになったとき、父も母も侍に斬られたのだと、血がにじむほど
手を握り締めていた。親戚もいない。俺ら忍衆を雇った草朱(くさあけ)が、
湯走の手に入れたという宝を奪って来いというから潜入してみれば、
いたのはこの子供で。その時は守りに長けているからといって俺が抱えることに
なったのだけども。
「仲間は皆殺しました。時間稼ぎは無用です」
・・・やっぱり。
でもまあ仲間はいてもいなくても関係なかった。最終的に俺は裏切ったろう。
この子はお偉いさん方に振り回されて迷惑してる・・・だから俺が連れて行こうと
思ってたんだ。俺も足洗って、この子がひとりで生きれるくらいまでは一緒に
いてやろうと。仲間が存命だったらお前は甘いだの任務は完璧に遂行するだの
色々言われていたはずだ。
「・・・っ」
さあどうする。そうゆう全部ひっくるめて、ここを切り抜けないと不可能だ。
切り抜けられなければ俺は死んで、この子は湯走の城の狭い狭いあの部屋に。
そんなのごめんだってんだちくしょう。
ふとそのとき、子供が俺の腕から伸び上がって、暗闇にいるあの女を必死に
目を凝らしながら見た。おい馬鹿落ちる、あぶないぞ。言いかけたところ、
子供は大きな声で叫んだ。耳を疑う。
「・・・おきくおねえちゃん?」
「、」
「!」
ついでに俺の感覚も疑った。子供が『おきくおねえちゃん』と呼んだ途端に、
乱桜の気配が大きく揺らいだからだ。今の今まで一片たりとも気配を揺らがせる
ことをしなかったその女が!子供は目が慣れたのか、なおも女を見つめて言い募った。
「やっぱり、おきくおねえちゃんでしょ?その手の、花のわっか、ボクが
 あんだのだもん!ね、おねえちゃん、だまってでてきてごめんなさい、でも
 ボク、ボク」
「・・・・・・」
狐の面をしているから、表情の変化なんぞわかりゃしないものだが、そのとき
なんとなく、本当になんとなくだけど感じた。あ、今、すごく悲しそうな顔をしてる、と。
乱桜は子供の声には応えず、ふっとこちらに背中を向けた。いつの間にか殺気は
消えている。代わりに感じるのは、とても物悲しく、それでいて優しい花の香り。
まるでひと季節しか咲き誇らない桜のような。
「・・・私は何も見ませんでした」
「・・・は?」
「早く行きなさい」
女が指をぱちん、とならすと、あんなに強く縫いとめていたはずのクナイが
いとも簡単に拘束を解き、十数m下の地面に落ちていく。
なにはともあれよくわからないが、逃がしてくれるのであればありがたくと、
痛む左肩をかばいながら子供を抱えなおす。
「おねえちゃん」
泣きそうな声で、子供が俺の右肩ごしに女を振り返ったけれども、そのときには
もう女の姿は無かった。かってに出てきたから、ボクのこときらいになったの?と
か細い声でつぶやく子供の頭を二、三度撫で、そんなこたねえよと言う。
これは単なる慰めではなくある種の確信。
(冷酷残忍、必殺の乱桜、の筈だったんだがねえ・・・)
顔は見ていない。白い狐の無表情な面に覆い隠され最後まで見ることは
出来なかった。それでも、あの儚くも艶やかな四肢と、鈴を転がすアルトソプラノ、
(あと、あの花の香り)
果ては自分の命まで一時でも握られてしまえば、・・・ああおかしいのだろうか、
顔も見えなかった、こちらを殺しかけた女だというのに。
「惚れた」
独り言として呟いたときには、腕の中の子供は泣きつかれて眠っていた。
: 創作 : - : - : posted by 古藍 :
駆け抜けてマイドリーム                 
どうしてお父さん、いなくなっちゃったの?
今更ながら、思い返せば随分酷な質問をしてしまったと
思っている。今ではちょっと天然でいつも笑顔な母、という
イメージが固定されて全く想像だにできないが、確かに当時母は
泣いていた。筈だ。首から提げて服の下にしまっているお守りを軽く触る。
父と過ごすことができたのは本当に短い間で顔も声すらも覚えていない。
周囲から聞かされる、偉大な鍛聖としての父、まるで一ファンが遠巻きに
眺めて必死で集めて得たような情報、そんな離れた距離でしか父を
感じることが出来てない。
偉大な父。強かった父。みんなの憧れだった父。私は、周りのどんな人
よりも父から遠い場所にいる。でも、鍛聖というあの立場なら。
父が感じていたものを知ることが出来るだろうか。父が何を思って、
父に何があって死んでしまったのかわかるときがくるだろうか。
父に少しでも近づくことが、出来るだろうか?
「・・・よしっ」
胸当てのベルトを緩むことが無いように締めた。腰に提げた武器を
確認する。今日も今日とて地下迷宮で材料探し。立派な鍛聖になるために!
基本初歩からコツコツ、っと。
「行こう!ザンテック!」
「☆★!」
工房のドアを開け放し、相棒のザンテックと一緒に、私はまた
夢に向かって駆け出したのであった!

サモンナイト-クラフトソード物語-/プラティ
: 別ジャンル : - : - : posted by 古藍 :
雨とgravity                 
まるで質量を持つかのような酸素が口を通して
肺に入り込んでくる。重く、湿気が目に見えるほど。
一週間ほど前から降り続ける雨は人々から外出する意欲を
奪い、家の中に閉じ込めていた。窓から見える風景はかすみ、
まわり全てのものが地面へ地面へといざなわれていくような、
途方も無い感覚をもてあます。
「・・・これじゃ、外に一歩も出れないね」
僕の部屋のベッドの上で足をブラブラ
させていたサファイアは、頷くことでそれに答えた。
いつもいつもポケモンと森を問わず山を問わず走りまくる
彼女にしてみれば、この長雨は退屈だろうと思ってはいたけれど、
その予想はどうも外れているようだ。数日家にこもっているにも
関わらず、サファイアは特に不満ではなさそうだった。
彼女はこの雨を、どうとらえているのだろう。
「つまらないんじゃない?」
問う。
「何が?」
「この長雨で、外いけなくて」
「んー」
思案気に伏せられた藍色は数回泳いだ後、窓の外へ視線を固定した。
あたし、前から雨は嫌いじゃなかとよ。ぽつりとこぼす。
「しずくが葉っぱのうえではじける音ば聞いたり、水溜りに
 わっかが広がる様子ば見たり。楽しかよ」
「・・・なるほどね」
どうやら彼女の超感覚の賜物らしい。うだるような湿気も
外出できないことも、彼女には全く関係ないようだった。
でも彼女のほうが、本当に僕より一枚上手だったと
今思い返せば感じることが出来る。
「それだけじゃ、なかとけど」
「他にもあるんだ」
「あんたと静かに一緒にいることなんか、あんまりないけんね」
特段照れもせず普通に言い放った彼女に、僕のほうが
むしろくびったけなのだった。
「・・・身に余る光栄です。お姫様」
: ポケスペ : - : - : posted by 古藍 :
虹と泥と君と                 
 TOVでユリエス。
クリア後ネタバレ含むので下げます。
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